【札幌カフェ】n8(ネイト)…すすきのと中島公園の間で僕らの帰りを待つ「ばあちゃん家」
名実ともに北国一の歓楽街・すすきの。
ディープにして華やかな”眠らない街”は、今日も多くの人に元気の源を切り売りする。
そのすぐ隣、地下鉄で1駅という距離には、四季折々の自然の美しさを映す中島公園がある。
酸いも甘いも噛み分ける大人が、ふとした瞬間に気をゆるめるようなこの”表情の豊かさ”も、札幌という街の大きな魅力の一つだと思う。
すすきのと中島公園の、ちょうど中間。
2つの潮流を分かつ”潮目”のような場所に「鴨々川」と名付けられた、小さな川が流れる。
そのほとりに、小さくて温かい居場所ができた。
n8(ネイト)…長年札幌の成長を見守ってきた住宅が、リノベーションでカフェに再生
店名の看板を頼りに足を踏み入れると、街なかのカフェではまず見かけない表示に驚く。
「スリッパにはきかえて 階段をお上がりください」
この建物は歴代飲食店だったわけではなく、元住宅。
大家さんのお母様が長年住まわれていたそう。
すすきのの外れとはいえ、今や「お店かオフィスかホテルしか無い」と言っても過言ではない、札幌駅前通に面した立地。
今からこの場所に「家を建てて住みたい!」と願っても叶うものではなく、何十年も前、札幌の街が形作られる過程だったからこそ出来たことなのだろう。
壊して新しく創るのは、簡単。
でも安易にその選択をせずに、この奇跡のような物件をリノベーションしてカフェにしたことは、札幌という街全体にとっても素晴らしいことだと、僕は思う。
内装の隅々にも、住宅時代の名残が感じられるこの場所のことを、オーナーさんは「おばあちゃんの家」と表現した。
作ろうと思っても作れない「温かさ」を可視化するように、柔らかな西陽が差し込んでくる。
ばあちゃん家の手作りケーキは、素朴で優しい味
数種類の「本日のケーキ」の中からパンプキンのパウンドケーキ、それとカフェインレスの紅茶をお願いすることに。
鉄瓶で供される紅茶と、青のうつわが可愛らしい感じ。
ケーキは甘さ控えめで、かぼちゃの風味がしっかり感じられる素朴で優しい味わい。
「今日は孫が遊びに来るから」
と、おばあちゃんがはりきって用意してくれた感じがして、なんだか愛おしい。
(実際、ケーキはオーナーさんの息子さんが作られているそうですが。笑)
かつてここに住んでいた”おばあちゃん”は、どんな想いでこの窓から変わりゆく札幌の街を眺めていたのだろう。
そんな答えのない思案に暮れることができるのは、この場所がカフェという形で残されているから。
窓側の席に腰掛け、このとてつもない幸運を、フォークでひとすくいしたケーキと共に噛みしめる。
【Shop info】
◇住所:札幌市中央区南8条西3丁目10 2F
◇最寄り駅:札幌市営地下鉄南北線 中島公園駅
◇駐車場:なし
◇営業時間:13:00-22:00
◇定休日:月曜