コーヒー屋さん月祭-こぽこぽ日和①
「こぽこぽ」
コーヒーをドリップするときにお湯が注がれていく音。
カフェを愛する私達にとって、それは幸せが生まれる瞬間。
ライターyumaが札幌の街を歩き、「こぽこぽ」のある素敵な一日を探します。
◇ ◇ ◇
「コーヒー屋さん」と聞いて、カフェには色んな呼び方があるんだなあと思う。「~屋さん」は、なんとなくあったかい感じの日本語。コーヒーは外来語で、そこに「~屋さん」をつけることにより、ギャップが生まれる。へんな感じがするけど、落ち着く感じもする。
この「コーヒー屋さん」の前の道を、私はよく通る。前を通りかかると、ふわっとかすかにコーヒーの香りがする。「あの道いい匂いするよね」、と一度友達と話題になった。
ドアをあけると、香りの粒子が全身を包み込むような、そんな感覚に襲われる。とにかく香りがいいお店。そして独特。この香りはほかのお店で嗅いだことがない。何の香りなんだろう。使っている豆が特殊なのかな。においって不思議。
いつも女性の店主さんが一人で出迎えてくれる。「こんにちは。」柔らかい声で挨拶してくれる。店主さんのおばあさんが仙台の方で、ずんだとコーヒーの組み合わせを思いついたそう。
最近暖かくなってきたので、ホットかアイスを選べるみたい。迷ったけど、今日はホットにした。セルフサービスの、レモンが入ったお水を持って席に着く。
このお店にくると、色んな音が聞こえる。お湯を入れる音。コポポポポポ、、、。コーヒー豆をミルに入れる音。ジャッ、、、パラパラパラ、、、ジャッ。この、乾燥した豆がこすれあう音が本当に好き。ミルが動き出す。最初は重みのあった音がどんどん軽快になってゆく。コーヒー豆が砕かれてゆくのが目に浮かぶ。
ミルの動きがとまると急に静けさが戻る。すると、時計の針の音が耳に入る。カッチカッチカッチカッチ、、、。
時間が音で表現されるって不思議。目にみえないし普段は聞こえることもない時間の流れ。時刻って時を刻むって書くんだ。うーん、刻んでいる感覚は普段持ててないかも。どっちかというと、どんどん流れていっちゃう。でも、いま私、この空間で時を刻んでいるなあ。そんなことを考えていたら、店主さんがハンドドリップしたコーヒーを持ってきてくれた。
素敵な陶器のマグカップ。マグカップにはコーヒーをいれるという容器としての機能だけでなく、何か私たちの心に働きかける何かがある。どこでだれが作ったものなのか?
「店主さんは、なぜこのマグを使ったのか?」ぐるぐる考える。おうちやコーヒーチェーン店では味わえない、楽しみ方の一つ。
このマグは底が三角形で、コーヒーを飲み終わった後にそれに気づいて、珍しくてしばらく観察した。
日本では、はっきりしないことや曖昧なことが美しいとされる。八百万の神を信じる日本人らしい価値観。ゆらゆらゆれる影を見ながら心地よいと感じるのは、きっと私も日本人だから。ふと目線を下に向けると、小さな白いきつねさん。ショップカードにもいるきつねさん。
日本の昔話ではなんとなく意地悪役にされがちなキツネ。人をだましたり、動物を騙したりする。
でもここのお店のきつねさんは、コーヒーを飲んでほっこりしている。そしてキョトンとした目でどこかを見ている。私もきつねさんのマネしよう。きょとん。
忙しい、忙しいと言いながら時間がどんどん流れてしまう人におすすめしたい、コーヒー屋さん月祭さん。
【Shop info】
◇住所:札幌市北区北十三条西3-2-27 ソシアルトミイNo11 1F
◇最寄り駅:札幌市営地下鉄南北線 北12条駅
◇駐車場:なし
◇営業時間:9:30-17:30(金曜12:00-18:00)
◇定休日:木曜
◇Instagram:@coffeeyasan.tsukisai