【札幌カフェ】十四堂珈琲…コーヒーに感じる「美味しい」以上の価値と経験
レジでひと声かけてカップを購入し、機械にそれを入れたのち、定められたボタンを一度だけ押す。
この国における「コーヒー体験」は、簡単で便利に、しかしちょっとだけ寂しくなってしまったように思う。
もちろん、これは悪いことではない。
100円とは思えないほど美味しいコーヒーを僕もよく利用するし、ここがきっかけでコーヒーを好きになる人が増えたら、それはとても素敵なことだ。
でも僕は、「コーヒーは美味しさを味わうためだけに飲むものではない」と思っているし、そんな特別な感情を与えてくれるコーヒーの力を信じている。
そこには、いつだってコーヒーを淹れてくれる”人”の存在が必要なのだ。
名店での修業を経て札幌市東区に舞い戻った、本格派珈琲店・十四堂珈琲
札幌市東区、最寄り駅で言えば地下鉄東豊線・環状通東駅の近くの、住宅街のど真ん中。
風に揺れる鮮烈な緑色の暖簾が目印のお店が、2020年7月にオープンしたばかりの「十四堂珈琲」である。
全面ガラス張りのドアはちょっと大胆に開け放たれて、夏の北海道らしいカラッとした風が吹き込む。
はじめての人でも中の様子がうかがいやすく、入りやすいのは、優しいお店の一つの条件だと思う。
お店の店主は、長野県の有名店「丸山珈琲」や札幌の老舗「丸美珈琲店」で修業を重ねた実力者。
出身は札幌ながら、コーヒーを学ぶために長野まで乗り込んだというのだから、その情熱は並々ならぬものであるということは想像に難くない。
店内はカウンターが数席と、2人掛けのテーブルが1卓。
いわゆるカフェというよりは、「コーヒースタンド」や「バー」に近い佇まいではあるが、かといって来店へのハードルが高いということは決してない。
コーヒーを愛し、知り尽くしたマスターが優しく、温かく迎え入れてくれるし、その人柄に共鳴した常連さんが作り出す空気も、穏やかでとても安心感がある。僕は経験したことがないが、個性がキラリと光るマスターの切り盛りする昔ながらの喫茶店は、多分こんな雰囲気だったのだと思う。
コーヒー初心者だとしても、心配はいらない。臆することなく一歩、足を踏み入れてみて欲しい。
オーダーメイドの「心地よい時間」
お店で扱っているコーヒー豆は、マスターが厳選を重ねたとっておきのラインナップ。メニューブックにも一つ一つの豆の丁寧な解説があり、安心して自分の好みのコーヒー豆を探すことができる。もちろん、マスターに相談しながら決めることも可能だ。
カフェインレスのコーヒーを取り扱っているのも、嬉しいポイント。
コーヒーの淹れ方は、フレンチプレスか「コレス」という金属製のフィルターの2種類。
エスプレッソマシーンもあるので、カフェラテなどのメニューも。こちらもカフェインレスに対応してくれて、とことん優しい。
コーヒーと一緒に楽しみたい甘いものは、じゃがいもを主原料として使った手作りカステラと、チーズケーキがメイン。
どちらもコーヒーに相性抜群でとても美味しいが、特にじゃがいもを使ったカステラは、ほっこりとした舌触りと優しい甘さが、コーヒーブレイクの時間をより素敵なものにしてくれる。
コーヒー豆から淹れ方、スイーツに至るまでマスターの優しい人柄が映し出されているようで、僕たちはきっとそこに魅せられているのだろう。
滞在中、近所のおじさんがふらっと訪れて、暑い夏の日にホットコーヒーを1杯だけ飲んでさっと帰る、というシーンに出くわした。
物静かで、二言三言しか会話はしていなかったが、きっと彼も「美味しいコーヒーを飲みに来ただけ」ではない、特別な体験をしに来ているのだと思う。
最後に少し小難しい話をすると、これから「何のコーヒーを飲むか」よりも「誰が焙煎したコーヒーを飲むか」「誰が淹れたコーヒーを飲むか」が重要視される時代が確実に訪れると思う。
ボタン1つでおいしいコーヒーが飲める時代だからこそ、誰が淹れてくれたコーヒーかというのが大事で、僕たちはそこに値段や味以上の価値を見出そうとする。
こんな循環があれば、これからもコーヒーが僕たちにとって特別な存在あり続けるし、カフェや喫茶店も、素敵な場所であり続けるだろう。
その1つのお手本が、十四堂珈琲のような気がする。
【Shop info】
◇住所:札幌市東区北14条東14丁目5-1
◇最寄り駅:札幌市営地下鉄東豊線 環状通東駅
◇駐車場:なし(近隣コインPをご利用ください)
◇営業時間:12:00 – 21:00
◇定休日:水曜
◇Instagram:@jyuuyondoucoffee
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