【コラム】カフェを訪れる僕らに課せられた「責任」
「こういうのって、こんな良い雰囲気のところで食べるから感動するほど美味しいのであって、家で食べてもきっと普通よね」
とあるカフェで隣に居合わせた素敵な老夫婦の、何気ない会話がとても示唆に富んでいるなと思った。
雰囲気。
目には見えないし、どうやって作るかの具体的なレシピも存在しない。
さらに言えば、100人に100通りの感じ方がある。
つまるところ、正解はない。
……そんなファジーな存在が、お店自慢の商品の味を大きく左右してしまう。
恐ろしさを感じる半面、これこそがカフェを経営する醍醐味、面白さだなと思った。
雰囲気を作り出す要素とは、何だろう。
内装、店員さんの接客、提供されるドリンクやフード、それを引き立てる器……。
もっと広い視野で見れば、窓から見える景色や店自体の立地なども、確かな影響力を持つ。
それともう一つ、忘れてはいけないのが、カフェを訪れるお客さん。つまり、僕たちだ。
あえて説教臭く語る必要もなかろう。
僕たちの振る舞い一つで、店の雰囲気が崩れてしまうこともあるし、逆に言えばより素晴らしい雰囲気にグッと引き上げることも出来る。
ゲストとして訪れる僕らに課せられた”責任”。
そのことだけは、心に刻んでおきたい。
カフェと僕らの関係は、互いに高め合い、より良い雰囲気を作り上げていくための「パートナー」だ。
お客様は神様、ではない。
だから、店側から雰囲気作りへの協力を依頼するのは真っ当なことだと思うし、そのために何らかの制約が生まれるのも必要なことだと考えている。
多様性が尊ばれる時代。
勇気を出して声を上げれば、必ず賛同してくれるフォロワーは現れる。
それが、雰囲気の良い店作りへの第一歩となる。
そんな店があることを、僕は伝えていきたい。